蓄電池をわかりやすく解説!仕組みや家庭用蓄電池の種類まで基礎知識を理解する
2024.06.03
電気代高騰により、太陽光発電や蓄電池に注目が集まっています。
太陽光発電はなんとなくわかるけど、蓄電池はどんな機器でメリットデメリットは何があって実際のところ経済的にお得なのかわかりにくくないですか?
本記事では、そんなお悩みにお答えします。
✅本記事の内容
- 蓄電池とは?
- 蓄電池の種類
- 蓄電池の3つのメリット
- 蓄電池の4つのデメリット
✅本記事の信頼性
・現役の某太陽電池メーカーの営業マンが監修(営業キャリア10年以上)
・営業実績は、住宅用太陽光発電を200棟/月を販売継続(2年以上)
電気の自給自足を行う上で欠かせないのが蓄電池です。
太陽光発電と連携し、昼は発電した電気を貯めて、夜に蓄電池に貯めた電気を使うことで電気代を大幅に抑えることができます。
本記事を見てもらえれば、蓄電池の仕組みや種類、メリット・デメリットが理解できるようになります。
蓄電池とは?
まず、蓄電池とは何なのかから見ていきましょう。
蓄電池は、電気の充電や放電を繰り返せる電池のことです。
太陽光発電などの発電機器を併設して使う蓄電池や、太陽光発電などの発電機器と併設せずにコンセントのみから充電できるタイプの蓄電池があります。
なぜ電気を蓄えることができるのか?
「蓄電池」と聞くと難しく考えてしまうかもしれませんが、仕組みはシンプルです。
身近なもので例えると、普段皆さんが使用されているスマートフォンやノートパソコンの充電と同じ原理です。
もう少し細かくみていくと、蓄電池は化学反応を利用して、電気の充電や放電を行います。
電池の中には2つの電極と電解液があり、それぞれの異なった性質を利用して電気を貯めることが可能です。
蓄電池には様々な種類があり、各種類ごとに使用している金属や電解液が異なりますが、基本的な構造は変わりません。
どのような種類の蓄電池があるかについては、別の章で紹介していきます。
充放電の仕組み
充放電がどのように行われているかのイメージを下記図で確認してみましょう。
簡単に言うと、蓄電池の中で2つの異なる電極(金属)を使って化学反応を起こし、電気を貯める動きを作ったり放出する動きを作っているということです。
マイナス極には電解液に溶けやすい金属、プラス極には電解質に溶けにくい金属が使用されています。
電解液に溶けやすいマイナス極の金属が電解液に溶けて電子を発生させ、プラス極に流れ込む際にプラス極からマイナス極に電気が流れる仕組みです。
蓄電池に内蔵されている金属の種類によって、蓄電池の種類が変わっていきます。
蓄電池の種類
それでは、蓄電池の種類を見ていきましょう。
今回は、4つの蓄電池をご紹介します。
- 鉛蓄電池
- ニッケル水素電池
- リチウムイオン電池
- NAS電池
家庭用蓄電池で一般的に採用されている蓄電池は、リチウムイオン蓄電池です。
寿命が長くコストも比較的安いのが採用されている大きな理由になっております。
①鉛蓄電池
まず1つ目が、鉛蓄電池です。
電極に鉛を使用しているため、鉛蓄電池と呼ばれます。
電解液である希硫酸の中に鉛の電極板が入っており、希硫酸と鉛が化学反応を起こし、電気が蓄えられる仕組みです。
自動車用のバッテリーや小型飛行機に用いられている蓄電池ですが、他の蓄電池と比較して重量が重たく、充放電を繰り返す中で性能が下がりやすいデメリットがあります。
また、有害物質である鉛を使用しているため、環境や人体に危険を及ぼす可能性もあります。
②ニッケル水素電池
2つ目が、ニッケル水素電池です。
正極にオキシ水酸化ニッケル(NiO(OH))、負極には水素吸蔵合金(MH、Mは金属)が用いられます。
他の蓄電池と比べ、内部抵抗が少なく、放電の際に大きな電力を流せることが特長です。
ハイブリッドカーのモーターを動かしたり、鉄道用の地上蓄電設備に使用されていた私たちの身近でもよく使用されています。
③リチウムイオン蓄電池
3つ目が、リチウムイオン蓄電池です。
スマートフォンやパソコンに使用されているのがリチウム電池です。
他の蓄電池と同様に電解液内にリチウムが使用されているため、リチウム電池と呼ばれます。
小型で耐久性に優れているため、幅広い用途で使用されており、充放電を繰り返しても劣化しづらい特長があります。
太陽光発電と連携する蓄電池の多くはリチウム電池が使用されています。
④NAS電池
4つ目が、NAS電池です。
コンパクトで高容量かつ自己放電が少なく、毒性のある金属を用いていないので安全性も高いのが特長です。
また、充放電にも許容力が高く、期待されている寿命は15年で蓄電容量も600kW〜数万kWにまで適用可能です。
プラス極に硫黄(S)、マイナス極にナトリウム(Na)、そしてリチウムイオン電池と同様に電解液には有機体であるファインセラミックスが用いられており、硫黄(S)とナトリウム(Na)の化学反応によって充放電を繰り返します。
メガワット級の電子貯蔵が可能なのに安価な点、設置場所の制約が少ないことで大手電力会社が注目している蓄電池です。
しかし、使用されている硫黄(S)とナトリウム(Na)が危険物指定されている点や、作業時には作業温度を300度に維持する必要があるため、取り扱い上での安全性が懸念されているというデメリットがあります。
家庭用蓄電池のタイプ
次に、蓄電池をタイプ別に見ていきましょう。
大きく分けると3つのタイプに蓄電池はわかれます。
- 単機能蓄電池
- ハイブリッド蓄電池
- ポータブル蓄電池
家庭用蓄電池で使われる蓄電池は、「単機能蓄電池」と「ハイブリッド蓄電池」の2つです。
その中でも、ハイブリッド蓄電池が販売数を多く伸ばしている蓄電池になります。
理由は、電力の変換ロスが少なく設置スペースも小さいためです。
お客様ごとにベストな蓄電池は異なりますので、どのタイプの蓄電池が合っているのか見ていきましょう。
①単機能型蓄電池
まず1つ目が、単機能蓄電池です。
単機能蓄電池は、「蓄電池用パワコン」と「蓄電池本体」の機器構成になっております。
基本的には、太陽光発電を既に設置済みの方向けの蓄電池です。
既に太陽光発電は設置済みで蓄電池を設置したい方が、後付けで設置しやすいように既設の太陽光発電システムを触らずに、蓄電池を設置することができます。
太陽光用パワコン、蓄電池用パワコンの2台の設置スペースが必要なことと太陽光⇒蓄電池(直流⇒交流⇒直流)の電力変換ロスがあるのがデメリットです。
既設の太陽光発電システムは触らないので、既設の太陽光発電システムの保証が継続されるメリットはあります。
②ハイブリッド型蓄電池
2つ目が、ハイブリッド蓄電池です。
ハイブリッド型蓄電池は太陽光発電システムを設置する際に同時に導入することで、太陽光用・蓄電池用のパワーコンディショナを一つで賄える蓄電池です。
2つのシステムのパワーコンディショナを1つで兼ねることから「ハイブリッド」と呼ばれます。
すでに設置されている太陽光発電システムも10年程度が経過するとパワーコンディショナの寿命を迎えます。(期待寿命は15年)
パワーコンディショナの交換需要に合わせて、ハイブリッド蓄電池を導入される方が多いです。
FIT期間中にパワーコンディショナの容量が変わると売電単価が変更になる可能性があるため、ハイブリッド蓄電池に置き換えを検討する際は既存の契約と合わせて当社ENCへ相談いただければと思います。
③ポータブル蓄電池
3つ目が、ポータブル蓄電池です。
持ち運びのできる蓄電池として、「ポータブル蓄電池」があります。
一般的にはコンパクトな大きさなものが多く、屋内の使用のみにとどまらず、キャンプや屋外での利用も多いです。
家庭用のコンセントから充電できることやその他の蓄電池と比べて、安価なため、お手軽に非常用の電源として使うこともできます。
アパートやマンションにお住まいの方で停電対策をされたい方は、ポータブル蓄電池があれば災害の備えが可能です。
現在、日本国内で販売されているポータブル蓄電池は海外製のものが多く、保証期間や使用条件などをしっかりと確認してから、購入を検討しましょう。
内部リンク:ポータブル蓄電池 デメリット
家庭用蓄電池を設置する3つのメリット
次に、蓄電池を設置すると得られる3つのメリットを解説します。
- 電気代を抑えることができる
- 停電時などの非常時でも電気が使える
- 再エネ電気の自給自足ができる
①電気代を抑えることができる
1つ目が、電気代を抑えることができる点です。
電気代は年々上昇傾向にあります。
ウクライナ戦争などの外的要因も深く関係しているため、日本国内だけではどうにもならない状況です。
下のグラフは、1ヵ月当たり260kWhの電気を使用した場合の電気代の推移を表しています。
各電力会社の電気料金は値上げ傾向であることは確認できますが、注目すべきは平均的な電気使用量はオール電化住宅で600kWh、電気ガス併用住宅で400kWhです。
つまり、一般的には下記の金額以上に電気を支払っていることになります。
蓄電池を設置することで、昼間に太陽光発電で発電した電気を家庭内で使い、余った電力は蓄電池へ貯め、太陽光が発電しない夜や早朝に 蓄電池に貯めた電気を使用することで、電力を買う量を減らすことができます。
各ご家庭ごとにどれくらい電気代を削減できるかは異なりますが、一般的には太陽光発電のみであれば電気使用量が3割減、太陽光発電+蓄電池であれば6割程度が削減可能です。
また、6月から国の電気代の補助(3.5円/kWh)がなくなり、再エネ賦課金も2024年4月分から値上げ(1.4円/kWh⇒3.49円/kWh)の発表がされています。
各電力会社で14〜42%の値上げが見込まれており、今後も電気代が家計を圧迫し続ける可能性が高いので、太陽光発電+蓄電池の価値はますます高まります。
②停電時などの非常時でも電気が使える
2つ目が、停電時などの非常時でも電気が使える点です。
蓄電池を導入すると蓄電池自体が電気の供給源となるため、電力会社から電力の供給が途絶えても、貯めている電気で生活することが可能です。
太陽光発電と連携していれば、太陽が出ている間は発電も止まらないので、発電した電気を蓄電池に貯めることで、最低限の電気は確保できます。
停電してしまうと通常は冷蔵庫やエアコンも使用することができなくなりますが、蓄電池の残容量がある限りは電気のある生活が送れます。
上図は、記載の家電を1時間使い続けた場合の消費電力を表していますが、合計で4,700Wh(4.7kWh)の電気が必要です。
つまり、10kWhの蓄電池があれば2時間は使い続けられるということになります。
一般的には、オール電化住宅の方で1日20kWhの電気、ガス電気併用住宅の方で13kWhの電気を使用します。
停電時にも平常時と同じ生活をされたい場合は、10kWh以上の蓄電池を選ぶ方が良いということです。
③再生可能エネルギーの自給自足ができる
3つ目が、再生可能エネルギーの自給自足ができる点です。
太陽光発電システムと連携することで、電気の自給自足ができます。
上述したように昼間は発電した電気を使い、余った電気を貯める、夜間は余った電気を使用するサイクルを作ることで、太陽光発電で発電した電気をフル活用することが可能です。
再生可能エネルギーを使用すると家計に優しいだけではなく、環境にも配慮した生活を送ることができます。
日本では火力発電が主な電力供給源で、発電する際に大量の二酸化炭素が発生します。
温暖化が進んでいる中で脱炭素やカーボンニュートラルが注目を浴びていますが、火力発電を続ける限り、二酸化炭素量の大幅な削減は見込めません。
再生可能エネルギーを活用し、自給自足を行うことで家計にも優しく地球にも貢献できる生活が送れます。
家庭用蓄電池を設置する4つのデメリット
次に、蓄電池の4つのデメリットを解説します。
- 初期費用が高い
- 設置場所の確保が必要
- 蓄電池には寿命がある
- 設置容量を十分に検討しないと節電効果が薄い
①初期費用が高い
1つ目が、初期費用が高い点です。
単機能型・ハイブリッド型蓄電池を問わず、高価な買い物になります。
現在の蓄電池の平均価格は1kWhあたり、15〜20万円で容量によって価格は変動します。
購入容量にもよりますが、仮に10kWhの蓄電池の購入を検討すると150〜200万の費用がかかるということです。
ただ、蓄電池は太陽光発電と違って価格が高いので国からも補助金が出ております。
国と各自治体の補助金の併用も可能なため、うまく活用して蓄電池の初期費用を抑えましょう。
具体的な補助金の内容は、当社ENCにご相談いただければと思います。
②設置場所の確保が必要
2つ目が、設置場所の確保が必要な点です。
蓄電池のサイズは横幅が50cm以上あるものが一般的で、蓄電池のメンテナンススペースも考慮して、どこに設置するのかは購入前に確認しておく必要があります。
また、重量も50~100kg超と重たいため、蓄電池を置くための基礎が必要です。
基礎を設置することが前提である場合、一度設置すると動かすことが難しいので、慎重に設置場所を販売店と相談した上で選定を行いましょう。
③蓄電池には寿命がある
3つ目が、蓄電池には寿命がある点です。
蓄電池は充放電が可能と言っても名前の通り、「電池」なので永続的に使用することはできません。
蓄電池の寿命には「サイクル数」と「使用期間」の2つの見方があります。
「サイクル数」は蓄電池の電気残量が0%の状態から100%まで充電し、すべての電気を使い切ることを1サイクルと呼びます。
蓄電池のカタログには8000サイクル、12000サイクルと記載がありますが上記サイクルを何回繰り返せるか、を意味します。
「使用期間」は設置してから何年使い続けられるかを指す指標です。
多くの蓄電池で保証期間は15年で設定されております。
15年を過ぎても充放電の最大容量は減りますが、故障していないのであれば、使用し続けることができます。
ただし、蓄電池は精密機械であるため、メーカーが保証する蓄電残容量(例えば蓄電容量の60%)を下回った場合は、蓄電池がエラー発報をしてメーカーによる検査が実施される流れです。
④設置容量を十分に検討しないと節電効果が薄い
4つ目が、設置容量を十分に検討しないと節電効果が薄い点です。
太陽光発電と同様に蓄電池にも容量があります。
極端な例で言うと、2kWの太陽光発電に15kWhの蓄電池を設置しても太陽光発電の電気でほぼ満タンに充電できなかったり、10kWの太陽光発電に3kWhの蓄電池を設置しても節電効果が薄いといった形です。
下絵のように、太陽光発電で何kW発電して普段どれくらいの電気を昼間使うのか、また蓄電池で充放電できる電力量は何kWで、蓄電容量は何kWhなのかが重要になります。
太陽光発電と蓄電池で一番経済効果が高くなるのは、電力会社から電気を一切購入しない生活をすることです。
そのためには、太陽光発電の容量、蓄電池の容量、昼間の電気の使い方、蓄電池の充放電量の4つを理解しておくことが重要になります。
太陽光発電と蓄電池の組合せはわかりにくいかと思いますので、ぜひ当社ENCにご相談いただければと思います。
蓄電池をわかりやすく解説
本記事では、蓄電池をわかりやすく、のテーマで太陽光発電の仕組みやメリットデメリットについてお伝えしました。
改めて、蓄電池のメリット・デメリットを確認しておきましょう。
✅メリット
- 電気代を抑えることができる
- 停電時など非常時でも電気が使える
- 再エネ電気の自給自足ができる
✅デメリット
- 初期費用が高くなりやすい
- 設置場所の確保が必要
- 蓄電池には寿命がある
- 設置容量を十分に検討しないと節電効果が薄い
太陽光発電+蓄電池の経済効果(節電+売電)を考えると、初期費用を回収するには15年程度はかかります。
太陽光発電のみであれば、初期費用は8年~10年で回収ができるため、太陽光発電のみと比べると太陽光発電+蓄電池はどうしても劣ってしまいます。
蓄電池を購入する場合は、積極的に国や自治体の補助金を活用することで初期費用の回収年数も短くなり、経済的にもお得になります。
ただ、長期的に見ると蓄電池は太陽光発電と一緒に設置を行うことで、家計の負担軽減を行えるだけではなく、災害対策や地球環境にも配慮した生活を送ることができるシステムです。
導入費用は高価ですが、お客様にベストな太陽光発電と蓄電池を設置できれば経済効果が高まります。
当社は太陽光業界歴10年以上のプロが、適切な蓄電池のタイプや容量のアドバイスをいたします。
蓄電池の設置でお悩みの方はぜひ一度、当社までご相談ください。